「プラットフォーム革命」の読書メモ
感想
☆4つ
断片的に知っていたり、無意識に感じ取っていたこともありましたが、これだけ体系的に分かりやすくまとまったプラットフォームビジネスの書籍は読んだことがなかったので良かったです。豊富な実例も◎。
プロローグ 燃えるプラットフォーム
第1章 プラットフォームが世界を食い尽くす
- 2015年アメリカのウェブサイトのトラフィックベスト10は全てプラットフォーム
- GitHubはソフトウェア開発プロジェクトに参加する人にとっての取引費用を大幅に低下させた(「○○、もうウザい作業とはおさらばだ」)
- 探すコストと情報コスト
- 交渉コスト
- 執行コスト
直線的なビジネス
- 20世紀の企業価値の中核はサプライチェーン
- サプライチェーンを通じて一方向に直線的に価値が流れる
- 工場、人的資本、流通経路への大規模な投資が必要
- 情報も直線的に(逆方向に)流れる
- 製造業、小売業、サービス業
- トップダウン
- 階層的組織
プラットフォームビジネス
- 現在、ビジネスの価値の中核をなすのはネットワーク
- 企業が何を所有しているかよりも何を結び付けられるかの方が重要
- 自社のビジネスの外にネットワークを育てることによってスケール
- 直線的なビジネスが、商品やサービスを作ることで価値を生み出すのに対して、プラットフォームはつながりを作り、取引を「製造する」ことで価値を生み出す
- プラットフォームのコア取引
- 創造する
- 結びつける
- 消費する
- 対価を支払う
- コア取引を円滑化するプラットフォームのコア機能
- オーディエンス構築
- マッチメーキング
- 中核的ツールとサービスの提供
- ルールの基準の設定
- プラットフォームは交換型とメーカー型の2種
- 交換型は1対1のマッチング、メーカー型は1対多のマッチング
- コア取引のコモディティー化のレベルに応じた取引設計が必要
- 取引で重視する側面が少ないサービスの場合はコア取引をシンプルにマッチングさせる(例: トイレ修理、食事配達、配車)
- 消費者が重視する要素が多いサービスは自動マッチングよりも、簡単に検索できるように(例: 民泊なら、所在地、広さ、アメニティ、ホストがいるかどうか、喫煙可かどうか、など消費者が複数の要素を重視する)
第2章 ハイエク対コンピューター
- ハイエク: 特定の時間の、特定の場所における状況に関する知識は集中的または統合された形で存在しない→市場経済が計画経済よりも優れている。これを解決するのが価格システム(一握りの指標の動きを見さえすれば経済全体で起きていることを把握できる)
- コース: 市場に参加するには取引費用がかかる。企業は、市場でやるよりも効率的に処理できる活動は社内化し、それ以外の活動は外部化することで取引費用を最小化する
- BCG創業者のヘンダーソン: 企業の生産効率は生産量を2倍増やすたびに25%上昇する
- ポーター: バリューチェーンにおける結びつきの最適な組み合わせを実現して最小限のコストで最大の価値を生み出すことで競争優位を維持する
- ある組織が一定の規模を超えると、ハイエクが指摘したローカルな知識の調整費用が上昇するため、規模の不経済が生じる
- コンピュータの処理速度が急激に高まり、取引費用が下落すると、一部の価値連鎖が崩壊し、組織を垂直統合する必要性が低下
- インターネットの普及により、分散型ネットワークで活動する個人が組織にとって代われるようになった(例: wikipedia)
- 中国国内の輸送活動の70%がアリババのマーケットプレース関係
第3章 限界費用ゼロの会社
- ソフトウェアに防御性をもたらすのは、ユーザー、取引、またはデータのネットワーク
- プラットフォームは直線的ビジネスに対して必要な内部資源がずっと少なくて済む
- プラットフォームはコネクションを円滑化することだけに専念して、生産の限界費用をなくす→供給の限界費用ゼロになり、潜在的な市場規模は爆発的に拡大
第4章 現代の独占
- 現在のプラットフォームは所有ではなくユーザーの参加によって成功を収めるため、プラットフォーム企業は、業界を独占していてもその地位は工業化時代の独占企業のように固定的ではない
- ユーザー基盤が似ているプラットフォームからの攻撃に弱い。業界を超えたプラットフォーム間の競争も驚くほど多く見られる
- プラットフォームは業界そのものを大きく成長させることで成功する
- エアビーアンドビーは、ホテル業界を犠牲にして成長してきたのではなく、全く新しい経済活動のソースを作り出し、成長してきた
- アリババの独身の日は2015年には1日で143億ドルの取引を仲介
第5章 ビリオンダラー企業をデザインする
- 直線的な企業は、商品やサービスを製造して価値を生み出す。プラットフォームは、ユーザー同士のつながりを作り、それを使った取引を「製造する」ことで価値を生み出す
- プラットフォームは、コア取引の各ステップをばらばらに切り離して最適化することはできない。消費者とプロデューサーという2つのユーザーグループは、ネットワーク効果ゆえに相互依存している。一方のユーザーグループ内で起きることは、もう一方のグループのエクスペリエンスに影響する。
- 交換型の取引はダブルオプトイン。ティンダーはスワイプ操作でマッチングが成立することにより、コア取引を簡単かつシームレスにした
- メーカー型はシングルオプトイン
- 一つのコア取引から始めること
- フェイスブックはシンプルなコア取引を構築することに力を注いだ
第6章 見える手
- ウーバーの主要都市におけるドライバーと乗客の比率は約1対10
オーディエンス構築
- 消費者とプロデューサーをクリティカルマス以上獲得して、流動的なマーケットプレースを構築する
- エアビーアンドビーは民主党全国大会の宿不足に目を付けた結果、宿泊場所不足の新たな解決策として全国テレビで報じられた
マッチメーキング
- 巡回セールスマン問題
- 協調フィルタリング
- 大量のユーザーの行動から共通パターンを見出すプロセス
ルールと基準の設定
- 「多くの意味で、フェイスブックは伝統的な会社よりも政府に近い。私たちは巨大なコミュニティをもち、他のどんなテクノロジー企業よりも本気でポリシーを作っている」
中核的ツールとサービスの提供
第7章 ネットワークに仕事を任せよう
- 「チャットルーレットの法則」
- 十分な規模に達したネットワークは、放置しておくと自然にユーザーと使用法の質が低下(「自由放任は変態の増加を招く」)
- フレンドスターはフィリピンで大人気に→アメリカの広告主獲得を目指していたから無駄にトラフィックを圧迫するだけ
- フェイスブックは登録要件をharvard.edu→.eduメールアドレス保有者に段階的に緩和することによりユーザの質を担保→高校生に開放する際も、ユーザの大学生からの招待のみに限定
- ネットワークの法則 = ネットワークの価値は接続ユーザ数の二乗に比例
- 実際はつながりのないユーザがいくら増えようと価値は上がらない、それぞれのユーザにとって重要なローカルネットワークが存在
- 小さいけれど密度が高く、極めて活発なネットワークの方が、大きいけれど散漫なネットワークよりも、はるかに価値が高くて有用
- 大学時代は人間関係の密度が人生で最も濃くなる時期 → フェイスブックの成功
- あるプラットフォームに特定タイプのユーザが一定数集まると、それからは同じタイプのユーザがどんどん入ってくる
- プラットフォームがまずどういうユーザを取り込むかがそのネットワークの成長に大きな影響を与える
- ミディアムは最初はジャーナリスト、起業家、リーディングシンカーの招待制ネットワークとしてスタートし、規模が一定に達してから一般公開
第8章 なぜプラットフォームは失敗するのか、どうすれば失敗を避けられるのか
- 大規模な初期投資
- 「このネットワークは参加しても安全ですよ」というプロデューサーへのサインになる
- 業界の既存者と協力
- グーグルのオープンハンドセットアライアンス
- プロデューサーの仕事をする
- Quoraは開始当初、創業者たちがQ&Aのほとんどを作っていた
- 既存のネットワークを利用する
- オフラインのネットワークでもOK
- 価値の高い、または「セレブ」ユーザーをつかまえろ
- 両方の役割を果たせるユーザーグループを探せ
- Etsyの調査によると、手工芸品を買う可能性が最も高い人たちは、手工芸品を作る人たち
- シングルユーザーユーティリティ
- ネットワーク構築前からユーザーに必須の機能を提供(例: Instagramのフィルター)
次のビッグチャンスを見つける方法
- 取引コストを下げたり、ボトルネックを取り除くテクノロジー
- 見えないか需要が満たされていないネットワーク
- ばらばらに存在する大量の未活用の資源
- この三つの要素が収斂しつつある業界が、医療、IoT、金融